2016年3月7日月曜日

小規模パイプラインを作ってみる その1


そもそもパイプラインとは何か? という事なんですが

パイプラインという言葉が色々な使われ方をしていて、以前は何かハリウッドの凄い高度な技術の結晶みたいな
妄想をしていたのですが、
今回作る作業効率アップの為の部分を言うと、レンダリングを含めたインポート、エクスポートツールです。

そして、パイプラインがあると何が良いかという事ですが、

・バージョン管理、インポート、エクスポートの効率化。(ファイルを探したり手動でディレクトリ作ったりはしない)
・シーン整理、データ整理の時間の削減。
・データ再現性を心配せずに作業できる。
・データ、フォルダ構成、ファイルネーミング等ががルール付けされ統一されるので
複数の工程を自動で流せるようにツールを作りやすくなる、引き継ぎやデータの取り回しが楽になる。
・スキルアップに集中できる。

おそらくハリウッド系の大手のほとんどはレビューのシステムやディスパッチャ、アセットブラウザなどを自社開発していたり
あるセクションに特化したパイプラインはとても高度な事をやっていますが、
今回自分が作っている部分はエフェクト+レンダリング+スラップコンプまでの効率をアップにフォーカスしています。(というかそこまでしか出来ない。。。)

以下はパクりたい参考にしたい今まで在籍した会社のパイプラインの大きなポイント。

・ディレクトリ構造
・インポート、エクスポート、シーンセットアップ、シミュレーション、レンダリングの簡略化
・デイリー、レビューのし易さ
・データベース+アセットブラウザ
データのトラッキング可能。データが確実に再現できる。
(例えばコンポの絵からモデルを作ったmaファイルまで辿る事が可能。)
・ディスパッチャ レンダーファームの稼働効率アップ
・セキュリティ 事故防止やアプルーブされたデータの保持(上書きや消去されたりしない)
・ディスク容量マネージメント自動化
・ブックマーク機能

参考にしたくない、してはいけないポイント。
・ソフトのデフォルトの大きなメリットのある機能を殺す。
・ディレクトリ階層が深すぎる。
・ファイル名が長すぎる。(シーケンス名、ショット名などディレクトリでカバー出来ている部分までファイル名に存在する)
・データの重複。(パブリッシュやアプルーブされたら別の場所にコピーされる等。ディスク容量トラフィックの圧迫)
・データの取り回しがしずらい。(別のショット、他のアーティストのデータを引っ張りずらい等)
・パイプラインそのもののラーニングコストが高い。
・表示されるデータが膨大なのにブックマーク機能が無い

パイプラインはジェネラリストが多い環境では必要無いという話も聞いた事がありますが
スペシャリスト制をとっていない環境でも十分活用すべきだと思います。
パイプラインを持たない(持てない)理由として、映画じゃない(ショットが多くない)、
予算がない、時間がない という事も聞きますが、時間がないからこそパイプラインでの効率アップが必要ではと思います。

もう一つのメリットとして心配事が減る。
エラーが起きる要因は機械よりも人間のほうが遥かに高いでしょう。
理想を言うとアーティステックな部分以外は全部マシンに任せたいというのが本音です。
ディレクトリやファイル名を間違えたり、バージョンの付け方がバラバラだったり
上書きしてしまったり、ミス以外にもその時の思考によってルールがコロコロ変わったりする事もあるかもしれません。
ミスをしない様に気をつけるポイントを減らせ、心の負担が減るのでだいぶ楽になります。

日本人は文化上教育上この辺りの事が得意な人が多いとも思います。優秀な人であれば特に。
なので日本にパイプラインを持たない会社が多いのかなとも思います。
ただ、それを自然に行える様になるまでの時間や常に整理しながら作業を行うコストはばかにならないと思います。

メリットは実作業だけでなく労働環境的にメリットがあります。
語弊を招くかもしれませんが一番大きなメリットは休みやすくなるという事です。
ルールに沿っているので、別の人がデータを開いても再現しやすいですし
パイプラインがあると作業工程を明確に分ける事が出来るので人材を見つけやすくなる。
一部の部分が出来る人がいればその部分を手伝ってもらえる人を見つければ良いです。

パイプラインの無い会社の人材採用の条件のハードルは高くなるともいえます。
データやり取り取次が面倒  =  何でもできる人にしか仕事を頼めない
という人材の確保のハードルを自分たちで上げる事に繋がってしまいます。
そういった環境は地頭が良く器用な人には良いが、研究者タイプには狭き門になります。
そして研究者タイプを雇えない状況だとクオリティは頭打ちになりがちです。

モデリングからコンポまで1人で多くの領域をカバーし良い映像を作り、
データの安全性も個人で確保しながらというのは、複雑化、高度化しているCGの発展状況を考えると
負担が大きすぎますし、1流のジェネラリストになる為のラーニングコストもこれから上がる一方だと思います。

以前勤めていた会社ではプロジェクト後のデータ整理も非常に大変でした。
その時間をスキルアップやバーケーションに使えたらどれだけ有効だったか。

もう少し具体的にパイプラインの機能を書こうかと思っていたのですが
なんだか長くなってしまったので、また次回にでも書けたらと思います。